「知的資産」とは⑦~知的資産の分類:構造資産~

知的資産経営における知的資産とは何かを知る7回目です。

 

前回では、3つに分類される知的資産のうち、人的資産について触れました。

前回同様、まず知的資産の分類基準から示しましょう。

 

知的資産を構成する分類の基準

この分類基準のうち、構造資産について掘り下げていきます。

 

構造資産

構造資産の基準は「役員・従業員が退職時に企業内に残る資産」です。別名で組織資産とも言われます。

分かりやすい構造資産の例は、特許権、意匠権、商標権といった知的財産権です。これらは、企業が取得している権利になります。社長が代わっても、開発チームの技術者が退職しても、企業がその知的財産権の主体であれば企業そのものに備わっている資産です。(ただし、個人事業主であったり、技術者個人に知的財産権を付与する社内規定がある場合等は、構造資産ではなくなります。)

また、「100年企業」という言われ方があります。創業してから100年以上経っている企業を指して言われる言葉ですが、当然、創業者1人だけで成し得る年数ではありません。カリスマ性の強い社長が交代してその企業が衰退してしまう、なんていう想像は容易ですが、100年企業が続いている背景には何があるのでしょうか。もしもその背景に、企業に根付いている理念や、文化や、仕組みがあるのだとすれば、まさに構造資産であると言えます。というよりも、100年企業は必ず構造資産を持っていると断言できます。

構造資産は、中小企業・小規模事業者より、中堅企業や大企業に多く現れる特徴があります。企業トップの交代が頻繁でも、組織として成り立っていけるような仕組みづくりに取り組まざるを得ないからです。しかし、本来は中小企業・小規模事業者こそ備えていなかればならない知的資産なのです。

現在、事業承継の問題が注視されています。どうして事業承継が円滑に進まないのか。それは、企業に事業を承継させる仕組みがないからです。単純に株式を譲渡して、税金対策をして、の話しではありません。社長が代わっても、職人さんが代わっても、たとえ行う事業そのものが変わったとしても、ちゃんと利益を生み出していける企業でいられるような承継ができる仕組みがあるのかどうか。これは構造資産にかかっていると言えます。

前回の人的資産は、人が持っている資産でした。人の力は大きな資産です。しかし、その人がいなくなることで企業から資産がなくなってしまうのであれば、人に頼っている企業の行く末は目に見えているでしょう。素晴らしい人材を活かすことはもちろん大切ですし、そんな素晴らしい人材の力を企業にフィードバックして残していける仕組みがあれば、未来を見据えた経営方針も立てやすくなります。

このように、構造資産を持つことは、世代を超えて企業を存続させる大きな力を持つということです。

次回は、関係資産を掘り下げます。

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