知的資産経営が活かされる場面:②補助金編
「知的資産経営が活かされる場面」の第一回目では、「事業計画編」として事業計画・経営計画の作成に知的資産経営がもっとも有効であることをご紹介しました。
知的資産を把握し経営・事業に活かす手法である知的資産経営は事業計画・経営計画に反映されますが、事業の全体的な計画のみではなく、もっとピンポイントな部分でも十分に効果を発揮します。
その代表的な場面が、補助金の申請です。
補助金とは
最初に、補助金がどういうものかのご説明が必要ですね。
ここで取り上げる補助金は、国や地方自治体、また国・地方自治体が運営母体となっている公益法人等が行っている資金援助制度です。補助金の特徴は、金融機関による融資と違い、返済の必要がありません。金額は50万円のものから、500万円や1000万円といった高額のものもあります。
同じように返済の必要がない助成金という制度もありますが、補助金との大きな違いは資金援助されるに至る条件です。
助成金は、申請用紙で求められる記載事項を満たし、証明に必要な添付書類等を提出すれば採択されます。主に厚生労働省が管轄しており、雇用環境に対して支給されます。条件を満たせば採択されるとあって、人を雇いたい場合や従業員の教育のために資金が必要であればとても心強い制度です。
一方の補助金は、申請用紙で求められる記載事項を満たし、必要な添付書類等を提出しても、それだけで採択とはなりません。主に経済産業省が管轄しており、企業や事業者の事業に必要な費用に対して支給されますが、申請書の内容や添付書類をじっくりと吟味され、この事業は資金援助するに値すると認められなければなりません。採択率は補助金の種類にもよりますが10%~30%と狭き門となっています。
では、どうすれば認められる事業となりえるのか。ここに、補助金と知的資産経営の強い関係性があるのです。
補助金と知的資産経営
先述した通り、補助金は申請書類や添付書類を内容に不備なく提出しても、それだけで採択とはならず、資金援助するに値する事業だと認められなければなりません。
例えば、新商品の制作をするから新しい製造機械を購入したいとします。この製造機械の購入に充当するために補助金の利用を考えた時に、申請書類はどういう内容にしたらいいのでしょう。
補助金の申請書類では、補助事業(例の場合では「新商品の製造」が補助事業となります)について、革新性・新規性があるか、市場・マーケットに対する影響はあるか、優位性があり差別化されているか、事業を実施する体制は整っているか、経営資源の強みは何か、そして当然ですが収益性はあるのか、といった補助事業を実施するうえでの経営的な項目を多岐にわたって記入しなければなりません。補助金の種類によって分量の差はありますが、大方共通しています。
そうなると、新商品を制作しようとする場合、その新商品の制作のために自社のどんな経営資源を投入し、新しい製造機械の導入でどう変化するのか。また、新商品そのものにどのような強みがあり、それらをどう活用するのか。その結果、どれだけの利益が生まれ、同業他社に対してどれだけの優位性が上がるのか、といったことをしっかり分析して把握する必要があります。
そして、こうした分析に長けているのが知的資産経営です。
知的資産経営は、事業全体の分析だけではなく、事業それぞれについても分析を行うことができます。また、商品・サービスのようなピンポイントの分析にも力を発揮します(商品分析と言います)。ひとつの事業や商品・サービスがどういった強みを持ち、それがどんな特異性・優位性と利益につながっているのかを判断することができる手法です。
補助金申請では、実施したい補助事業に関する分析が重要となります。この分析に知的資産経営を用いて、申請書類に落とし込んでいくことになります。補助金申請においても、自社が持っている知的資産を最大限に活用すると申請書に根拠を交えて伝えることで、審査員の方々に補助事業の必要性をアピールしていきます。
補助金の利用で絶対に間違ってはいけないのが、補助金が欲しいために補助事業を行うことです。意外と、こうした判断で補助金申請をしたいという経営者はいらっしゃいます。ですが、あくまで自社を発展させたい過程で利用するのが補助金です。本末転倒な動機での補助金利用にならないためにも、補助金申請をお考えの経営者には、知的資産経営の活用を推奨いたします。